こんにちわ、こうたです。
今日は時間があるので、以前
「初恋」というエントリーで書きかけた、僕自身が明確に自分がゲイなのかなと気付いたときのことを、思い出しながら、書いてみようと思います。
小学校3年生くらいから、僕はよく、気の合う友達3人組でつるんで遊んでいました。
ひとりは、あっちゃん。
体格が良くて喧嘩ッ早いガキ大将。面倒見の良いところもあって、力持ちでスポーツもできたので、男子からも女子からも結構人気がありました。家が大きな農家で、あっちゃんも良く手伝いをしていたので、いつも真っ黒に日焼けしていました。
ひとりは、まさくん。
母子家庭育ちで性格はおっとりしてちょっと口下手だけど、いつもニコニコしながらみんなの後ろをついてくる感じ。でも、性格に反して運動神経がよく、あっちゃんより短距離は早かったし、サッカーも上手かった。スラッとして結構ハンサムで威張ったところがないので、バレンタインに女の子から一番たくさんチョコレートをもらうのは、いつでもまさくんでした。
そして僕。
今日は何して遊ぶか提案したりする、三人の中での作戦参謀的な立ち位置。
当時、背の順で並ぶとクラスで一番前か二番目くらいのチビッコだったけど、勉強は好きだったので、あっちゃんとまさくんの宿題の面倒を見るのは、いつもだいたい僕の役目でした。
僕の家は両親が共働きで毎日夜遅くまで帰らず、まさくんちもお母さんが働いていたので、僕らは学校が終わるといつもだいたいあっちゃんの家に集まって遊んでいました(そういえば、おやつも夕飯も当たり前のようにあっちゃんのお母さんが用意してくれていたなぁ・・・とても、お世話になりました)。
そんな感じでそれぞれ性格が違いながらも、兄弟のように仲の良かった三人。
遊びといっても、ど田舎だったので、木登りしたり、川で泳いだり釣りをしたり、虫を捕まえたり、そんな野生児のようなことばかりしていました。
そんな僕らも、五年生の後半くらいから、ちょっとずつ恋愛のことを意識し始めました。
夏休みも終わる頃、田んぼのあぜ道で三人で遊んでいるとき、あっちゃんが突然、二人に言いました。
「2組のひろ子ちゃん、可愛くない?なんか、気になるんだよね」
僕は正直まだその頃、恋愛を知識としてしか知らなかったので、
「そうだね、元気で明るくていい子だよね」
と、話を合わせました。
まさくんは、
「可愛いね、あっちゃん、付き合いたいの?」
と、聞きました。あっちゃんは頬を赤らめながら、
「うん、付き合いたい!」
と、答えました。それが、僕が明確に覚えている、仲間内で「恋」らしきものについて初めて会話した瞬間だったと思います。
ひろ子ちゃんは、快活で頭も良くて、バレーボールの選手で運動神経も抜群の、クラスでもひときわ目立つ女の子でした。僕は、あっちゃんにはとても似合うんじゃないかと思いました。
それから、徐々に少年たちは色づきだし、あっちゃんは周囲に冷やかされながら、ひろ子ちゃんに告白しました(記憶があいまいだけど、確かそのあと何度かデートっぽいことをしてたんじゃないかな、と思います)。
三人の会話も、セミの抜け殻がいっぱい取れる場所の話から、徐々に恋や、ちょっとエロ方面の話にシフトしていきました。
内気なまさくんは、いきなり告白とかはしないまでも、僕たちにはひそかに好きな女の子の話を打ち明けてくれていました。
僕はといえば、前のエントリーで書いたように、なんとなく「あいつら付き合ってる」という雰囲気にされてしまった仲の良い女の子がいたお蔭で、「お前は彼女がいるからなー」ということになっていて、告白とか、誰が好きとかという恋愛トークからは距離を置くことができていました。
その頃から、僕はちょっと違和感を感じ始めていました。
あっちゃんや、まさくんは、僕を参謀役のように思っているので、何でもあけっぴろげに相談をしてくれます。でも、僕は、正直二人の悩みが、ピンと来ないのです。女の子にこんなにも夢中になる、ということが、どうにも理解できないのです。
そしてもうひとつ。
僕は、まさくんが夢中で女の子の話をしているとき、なんだか無性に腹が立つようになりました。あっちゃんがひろ子ちゃんに告白したときには何も思わなかったのに、です。でもそのときは、その感情が何なのかはよく理解できませんでした。
時は流れて、六年生の夏。
僕らはいつものように、近所の川に泳ぎに行きました。
3メートルくらいの滝みたいになっている場所から飛び降りて深くまでもぐって、滝つぼの底から一番たくさん石ころを拾って来たら勝ち、という遊びをしていたときのこと。
川べりで石の数を数えていたとき、気が付くと僕は、ぼーっと、まさくんのことを見つめていました。ちょっと男らしく、厚くなりだした胸板。そして、股間のふくらみ。それがおそらく、僕がゲイとしてはっきりと性欲を意識した瞬間だったと思います。
僕は混乱しました。その日は、急にお腹が痛くなったと言って先に家に帰りました。
自分は男なのに、何でまさくんのことを見ると心臓が高鳴るのか。
あっちゃんも、まさくんも、正常なのに、僕だけなんか変だ。
こんなこと、親にも先生にも、言えない。兄弟みたいな友達の身体を見て興奮するなんて、汚らわしい。
情報の少ない田舎だったこともあり、僕は自分が、世界でひとりだけの異常な存在なのだと思いました。本を読むのが好きだったので純文学も何冊か読んでいましたが、僕がそれまでに出会った作品に描かれた恋愛は、男女の間のものばかりでした。
まさくんに負い目を感じて、少しずつ距離を置くようになり、僕は生きていくことが怖くなって、自殺までも考えました。
でも、それを助けてくれたのも、やっぱり本でした。
村山由佳さんの「BAD KIDS」という作品があります。この小説の中に、主人公が同性のチームメイトを好きになり、悩み、葛藤する様が、生き生きと描かれていました。それはまさに、僕の悩みにリンクしました。
少なくとも、世界にひとりだけでは、ないのだ。
ちょっとだけ、希望が持てました。
あのとき村山由佳さんの小説に出会えて、本当に良かったと思うのです。
ずーっと、ずーっと、誰にも話したことのなかった自分の初恋の話を、やっとこうやって文章にすることができました。村山さんと比較するのはおこがましいけれど、僕のこんな駄文も、どこかの誰かの心とリンクして、助けになれば嬉しいなと思います。
初恋は実らないというけれど、ゲイの初恋なんて、もうめちゃくちゃ大変なんですよ!(笑)